自転車の補助輪がなかなかはずれなかった
こわがっていたわたしに
おにいちゃんが見本を見せてくれた
こうだよ こうやってこぐんだよ
家の前の広い駐車場で
近くの公園で
振り返ればいつも
お母さんが見守っていてくれた
捨て猫をひろって帰っても
絶対に怒られなかったけど
彼氏に夢中になって家に帰るのが遅くなると
すごく怒られた
自転車の二人乗りは
無茶をして転んですり剥いても
すごく楽しかった
畑から勝手に桃をとって食べたら
当たり前だけど怒られた
だけどすごっく楽しかったんだ
オリオン座がきれいな夜
土手に寝転んではじめて夢を語った
でも途中から涙で何も見えなくなっていった
今でも覚えてる
上京する日 駅までのバスの中に降りそそぐ朝陽のまぶしさ
はじめての erykha badu のLIVE
すごく緊張して入ったTATTOOショップ
悲しいキス
雨に打たれた夏の終わり
幸せすぎたあの日の二人
とにかく
あてもなく
自転車をこいでいた
無駄な事なんてひとつもなかった
出逢って意味のない人なんて一人もいなかった
今まで見た景色
もらった温もり
すべてのおかげで今の私になったんだ
あの頃 思い描いていた夢を
もう一度信じてみる
荒れ果てた庭にも
新しい花はかならず
咲いていくよね?
199X 春 自宅玄関にて
まだ補助輪のついた愛車と共に